緑の環境を活かす12のテクニック

%e6%8a%80%e6%b3%95%ef%bc%91%ef%bc%92sns
 
植栽は、日照や土壌、気候などの環境要因や玄関や中庭、屋上、壁面などの敷地条件によって異なる様々なテクニックがあります。ここでは、環境や敷地・建物など条件別の植栽の技法をご紹介します。
 

日照条件から樹種を変える

樹木が健康に成長するためには、日照、土壌、水分、気温、そして風通しが必要になります。これらの要素がどの程度確保出来るかで、選択できる樹種やお庭の構成が決まります。中でも日照は、最も調整が難しい要素です。植栽の計画は、どの角度からどの程度、お庭に日が入るのかを把握することから始まります。
 
日が差し込む方向や角度は、午前→正午→午後と変化するので、時間的な変化も考慮しながら配植する場所の日射量を検証しましょう。夏の太陽と冬の太陽では高さが違うため、季節による風の位置と範囲の変化も把握しておく必要があります。
 
日照条件を検証したら、次にその環境で成長可能な樹種を選択します。樹木は、日差しを好むものと日陰を好むものとに分けることが出来ます。アカマツやサクラ類は、明るい日差しを好む樹木で、陽樹と呼ばれています。アスナロやアオキのように、日陰を好む樹木は陰樹、コブシやエゴノキのように、やや日陰を好むものは中庸樹と呼ばれています。中にはコウヤマキやモミのように、小さきときは陰樹で大きくなると陽樹になるものもあります。
 
全体的に、殆どの花木は日当たりを好む陽樹と考えていいでしょう。日が当たらないと花付きが悪くなるので、植栽する場所が十分な日照を確保できるか確認が必要です。日当たりが良ければ選択できる樹種が多くなるため、極端に言えばどのようなタイプのお庭も作ることが出来ます。
 
ただし、同じ陽樹でも葉が薄い樹木や温帯に自生する落葉樹の多くは、朝日が好むが西日は嫌う傾向にあるので、西側のお庭は避けたほうが良いでしょう。逆に、常緑樹や暖地から亜熱帯で育った植物は、西日を好む傾向にあります。
 
一方、日の当たらないお庭は、基本的に陰樹を中心に構成します。陰樹は濃緑色の葉を持つものが多いので、多用すると日陰のお庭がさらに暗い印象になりがちです。同種でも斑入りを使ったり日陰に耐えるカラーリーフを組み合わせると良いでしょう。
 
また、暗く湿気が多いと病・虫害が発生しやすいので、水勾配を取り砂を混ぜた土壌とすることで、土の排水性を高めたり風通しを良くして湿気がたまらないように設計しましょう。
 

狭い空間に樹木を植える

玄関まわりや駐車場の脇など、植栽するスペースがあまり取れない場合は、樹形が小さくまとまり枝が横に広がらない樹木か成長が遅い樹木を選ぶことがポイントです。樹木は、カクレミノやナツツバキ、コウヤマキなどが適しています。足元は色々植えると窮屈な印象になるので、ヘデラ類などの地被植物でまとめましょう。
 
モウソウチクやマダケは、葉に日光が当たるか棹には当たらない環境を好むので、中庭など上部だけにしか採光を取れない狭いスペースでの植栽に適しています。エゴノキやヤマボウシなどは、枝張りが大きくなるものの成長が遅いため、横方向にそれなりにスペースを確保出来るならば植栽することも可能です。
 
広葉樹の多くは、樹高の0.5〜1倍の枝張りがあるものが多いが、ムサシノケヤキやホウキモモなど、横に広がらない性質に改良された品種もあります。針葉樹は高さの割に横幅が出ません。この特性を活かしてカイズカイブキを細長く仕立てて、狭いスペースに利用する方法もあります。
 

乾燥したお庭に樹木を植える

屋上庭園や人工地盤など乾燥しやすい土壌に植栽する場合、土壌改良や灌水整備などにコストや手間がかかります。コストを掛けずに乾燥条件を活かすお庭作りの方法をご紹介します。
 
乾燥した環境を好む植物は、高山の上部や尾根、海岸線付近などの風が吹く場所や、土ではなく砂や岩場に自生するものです。アカマツやクロマツ、オリーブなどは比較的乾燥に強い樹木で、乾燥したお庭の主木として利用できます。また、ニュージーランドの海岸線に自生するユッカ類は中木から低木まであり、使いやすいです。地被植物では、海岸の岩場に張り付いて成長するイソギクやセダム類が乾燥を好む傾向にあります。
 
乾燥に強い樹木は、日当たりの良い場所に植栽することが基本です。土に水が滞らないよう、森土して地盤面などよりも少し持ち上げて排水性を高めましょう。
 

湿気に強いお庭を作る

湿気の多いお庭は、野山の水辺や谷、河原、湿地に生息する樹木を基本構成として植栽デザインをしましょう。中高木では、カエデ類やツリバナ、ヤナギ類、低木・地被植物では、アオキなどが向いています。
 
ヤナギ類は池や沼など、日当たりの良い水辺や河原に自生するので、お庭に日照が確保できる場合これらを植栽の中心にするといいでしょう。一方、カエデ類やツリバナは、谷間など半日陰のような場所に多く自生するため、日照条件が悪い場合に利用できます。
 
湿気が多いことは、植物にとって必ずしも悪条件ではありませんが、土中の水分が過剰だったり、風が抜けずに蒸れるような環境では排水勾配や塀に開口部を設けて通風を確保するなどの対策を講じましょう。
 

痩せた土地でお庭を作る

土地が痩せるとは、土中に樹木の成長にかかせない有機質が不足している状態を指します。土地が痩せているかは、造成の有無や敷地の表土、深土の状況で判断します。
 
計画する敷地が畑の跡地だったり、敷地に草が茂っているようであれば樹木が育つのに適していると言えます。逆に、裸地のままで草が生えていなかったり、地盤が崩れないようセメントで固めてある場合は、土が肥沃でなくても育つ樹種を選んで植栽するか、お庭にする部分を耕して土壌改良をする必要があります。
 
痩せた土地でも育つ樹種は、樹木の根に窒素が固定できるマメ科の植物や、菌根を有するものです。中高木では、アカマツ、イヌエンジュ、くろまつ、シラカンバで、低木・地被植物ではアキグミ、エニシダ、マルバグミ、ハギ類などです。
 
土壌改良では、土に排水性や保水力を持たせ、さらに有機質を補充することがポイントになります。
 

海の近くでお庭を作る

潮風に含まれる塩分は樹木の成長を妨げるため、海辺の土地では塩に強い植物を植えるか、塩分の影響を防ぐ工夫が必要になります。塩分に比較的強い樹木は、葉が厚くて硬く、海岸線に自生するものです。
 
海に近くても、常時直接潮をかぶること無く、風もあまり強く吹かない場所なら、クロマツなどのマツ類やイヌマキなどのマキ類を植栽できます。暖地であればカナリーヤシやワシントンヤシ、ユッカ類が植栽可能です。
 
また、潮風が副場所でも工作物などで潮風から遮蔽したり、前述の潮に耐えられる樹木でお庭を囲えば、潮風に極めて弱いもの以外は植栽可能です。ただし、塩が付着したまま放置すると成長が阻害されるので、塩が雨などで自然に流れるような場所や普段から水で流せるような場所に配植しましょう。
 
海風が直接当たらない、少し海から離れた場所では、埋立地の街路樹で見られるような樹木が植栽可能です。葉が厚く潮を多少浴びても葉中に塩分が浸透しにくいヤブツバキやスダジイ、ウバメガシ、タブノキ、ヤマモモなどが代表的な樹木です。
落葉樹は全体的に潮風に弱い傾向にありますが、ネムノキやアキニレは若干潮に強いとされています。
 

樹木の分布を正しくつかむ

樹木の成長には、地域ごとの気候が大きく左右します。植栽する地域がどのような気候区分に属しているのかを事前に知っておく必要があります。植生分布は、水平分布と垂直分布の2つに大きく分かれます。
 
水平分布とは、気候の水平方向での変化をまとめた区分のことです。南北に長い日本では、北海道から沖縄までの間にかなりの気候差があり、それらが樹木の植生に違いを生み出しています。
 

1・水平分布とは

樹木の水平分布は、「最も寒い地域」「やや寒い地域」「暖かい地域」「暑い地域」の4つに分類することが出来ます。
 
「最も寒い地域」とは、北海道の中部以北、本州の高山地帯にかけての地域を指します。冬がとても寒いのが特徴です。そこでは、植生の亜寒帯針葉樹林が中心となります。北海道ではエゾマツ、トドマツなどの常緑針葉樹に、落葉樹が少し混ざる森となります。冬は、落葉樹が葉を落とし針葉樹の緑が目立ちます。
 
「やや寒い地域」とは、本州中部から北海道の西南部までの地域を指します。年平均気温が5〜14℃くらいの範囲です。植生は温帯落葉樹林が中心で、落葉広葉樹のブナやシラカンバ、トチノキ、ミズナラなどが自生します。樹木によって四季の変化が最も感じられる地域です。
 
「暖かい地域」とは、本州南部から四国・九州までの地域のことです。年平均気温は14〜16℃程度です。ここ数年は地球温暖化が進み、ますます暖地のエリアは北上しています。植生は、暖帯常緑広葉樹林が中心で、アラカシやクスノキ、スダジイ、ヤブツバキなどのように葉が広く艶のある常緑広葉樹が主に自生しています。
 
「暑い地域」とは、紀伊半島南部から四国南部・九州東南部・小笠原諸島・沖縄初冬までの海岸や周辺の島々を含む地域のことです。年平均気温は16℃以上で雨が多いのが特徴です。植生は亜熱帯植物が中心で、幹や枝から下がった根が特徴のタコノキや、本州では室内緑花で馴染みのあるガジュマル、南国風の庭園に使われるソテツが生えています。
 

2・垂直分布とは

樹木の垂直分布は「高山帯」「亜高山帯」「低山帯」「丘陵地」の4つに大別できます。
 
「高山帯」とは、標高2500m前後の地域を指し、風が強く1年を通して冷涼な気温です。冬が寒く積雪も多いため、地面を這うハイマツや樹高のあまり高くならないキバナシャクナゲがあります。本州では2500mですが、北海道ではそれ以下の標高でもこの地帯の樹木が自生します。
 
「亜高山帯」とは、標高1500m前後の地域のことです。亜寒帯針葉樹林と同じく常緑針葉樹林が多く、落葉樹が少し混ざる森になります。本州では、常緑広葉樹ではハクサンシャクナゲ、落葉広葉樹ではナナカマド、ダケカンバなどが見られます。
 
「低山帯」とは、標高600m前後の地域です。本州では、ブナやミズナラ、シラカンバ、クリ、カエデ類の落葉広葉樹が主に茂り、常緑針葉樹のアカマツが混ざり、秋に美しい紅葉を見せます。水平分布では温帯落葉樹林に近いと言えます。
 
「丘陵地」とは標高500m以下で、スダジイやヤブツバキ、カシ類などの常緑広葉樹が主に茂ります。落葉広葉樹ではアカメガシワやネムノキが自生します。街路樹でよく使われるケヤキもこの地帯に属します。水平分布では暖帯常緑広葉樹林に近いと言えます。
 

寒地の植栽テクニック

ここでいう寒地は、年平均気温が15℃未満の北域を指します。水平分布では「最も寒い地域」「やや寒い地域」に該当する地域です。具体的には中部以北の山地や南東北から北海道にかけての地域で、冬はかなり寒くなります。
 
寒地は、ブナなどの落葉広葉樹とイチイなどの常緑針葉樹が植栽の基本構成となります。常緑広葉樹の植栽は難しいですが、ユキツバキやヒメアオキは雪の中に埋もれても越冬することが出来るため、場所によっては植栽が可能でしょう。
 
地被植物では、セイヨウシバが比較的寒さに強い種類です。これ以外は、ササ類やギボウシなど、冬に地中の根だけなっても越冬出来る草本類を使用します。ヤブランやヘデラ類など、温暖地のグランドカバーの多くは寒さを嫌うため、寒地での植栽は避けましょう。
 
常緑のツル植物も、寒さに弱いものが多くあります。グランドカバーや壁面緑化などにツル植物を使う場合は、その土地に自生する落葉のツル植物を使います。
 
寒地の植栽で最も難しいのが、寒風対策です。雪の名kで越冬できる樹木は少なくありませんが、寒風が強く吹き付ける場所は、低音と乾燥のために樹木の生育は阻害されます。したがって、寒地ではフェンスやネットで寒風を遮るなど、お庭の風対策を万全にしておくことが重要です。
 
また、寒地の植栽では凍結深度も問題になります。凍結深度とは、冬季に土壌が凍る深さのことです。土壌が凍ると根も凍り、樹木が弱り枯れてしまうことがあります。そこで地表面をムシロなどで覆い、乾燥と寒さを防ぎます。
 
土壌改良で水はけをよくし、土中に水が滞留して凍るのを防ぐなどの対策を取ります。改良する土壌は、凍結深度以上に行わなければなりません。
 

日照が少ない北のお庭のデザイン

2階建て以上の場合、北側のお庭には敷地建物により大きな日陰が出来ます。日照環境は樹木の成長にとって重要な要素の1つであるため、日照量が少ない北側の植栽は日陰を好む樹種か、あるいは日陰でも耐えられる樹種で構成します。
 
配植に際しては日影図などを利用して、影が最も短くなる夏至と最も長くなる冬至のそれぞれで、計画地のどこに終日陰と半日陰が出来るかを確認しながら樹種の選択と配置を行いましょう。
 
建物の北側は、年間を通して全く日が当たらない場合も考えられますが、これは植物の成長にとってかなりの悪条件であると考えられます。このような場所ではたとえ日陰に強い樹種でも植えた後の成長が望めないため、当初から完成形に近い樹形をしたものを入れてお庭を仕上げます。
 
日照条件が悪くても天空が空いていれば樹木の成長が望めますが、天空が屋根や軒で完全に塞がれていて、日照だけでなく雨水による水分の吸収もほとんど期待できない環境ならば、植栽は断念しましょう。
 

南のお庭の植栽における意外な落とし穴

建物の南側のお庭は日照条件に最も恵まれた環境なので、春から秋まで花や実、紅葉など樹木の様々な姿を楽しむことが出来ます。南側のお庭では、こうした変化を取り込んだ配植をするのがポイントです。
 
樹木は、ほとんどの樹種が植栽可能です。特に日照条件が良いと花付きも良くなるため、花の美しい樹形は積極的に植えましょう。ただし、アオキやアセビ、カクレミノ、マンリョウ、ヒイラギナンテン、フッキソウ、ヤブコウジ、ベニシダなどの陰樹は、日当たりを嫌い湿気を好むため、植えるのは控えましょう。
 
建物の南側にお庭を作り、室内から樹木を眺めるように植栽をデザインした場合、室内からは常に樹木の北側を見ることになります。日当たりの良い南側のお庭でも樹木自体の南側と北側では日射量が異なるため、普段見えていない側(南側)と見えている側(北側)の枝葉の成長に大きな差が出て樹形が不自然になる場合があります。
したがって樹木を南側に配置した場合は、樹木の南側の葉の茂りを抑えるよう、他の樹木と組み合わせたり塀などの工作物に近づけたりして、日射量を調整するなどの工夫が必要になります。
 
また、日当たりが良く水やりが適切で土の状態が良ければ樹木の成長は早くなります。その為、南側のお庭はほかの場所よりも植栽後の剪定や整枝を多く行いましょう。
 

落葉樹中心の東側のお庭

建物の東側にあるお庭は、柔らかい朝日と午前中の日差しにより、程よい明るさと暖かさが得られます。落葉樹の多くはこうした環境を好むので、東側は落葉樹中心に植栽しましょう。落葉樹には、エゴノキのように、午前に日が当たれば午後は日が当たらなくても丈夫に成長する樹種が多いのが特徴です。
 
配植は、高木を明るい葉色の落葉樹にして低木や中木を常緑にすると、冬の日当たりを確保しながら1年中緑を楽しめるお庭になります。
 
東側のお庭では、陰樹、陽樹、中庸樹とも植栽可能です。中でもカエデ類やヒメシャラ、ナツツバキ、雑木林のイヌシデやアカシデのように、半日陰のやや湿り気があるような所に自生する中庸樹が一番適しています。
一方、暖地性で夏に花をよく付けるサルスベリやヤシ類、柑橘類は、日照不足で花付きが悪くなるおそれがあるため向きません。
 
植栽の制約が比較的少ない東側のお庭ですが、冬に寒風が吹き込んでくる環境では日当たりの良さよりも寒さが問題です。寒さの厳しい環境では樹木の成長が妨げられるので、特に寒地の場合は冬にどの方向から多く風が吹く下確認した上で適切な防風対策を行いましょう。
 

西のお庭は西日で葉焼けの危険

建物の西側は、南側と比べて日差しが強すぎる場合が多くあります。葉が薄くデリケートな落葉樹は夏の西日で葉焼けを起こすことがあるので、植栽可能な樹種が限られてきます。たとえばハナミズキやセイヨウトチノキなど、海外から導入された落葉樹は、西日を受けて葉枯れや色付きが悪くなる場合が少なくありません。
 
常緑広葉樹は西日に強く、一部の陰樹を除いてほとんどが植栽可能です。特にシマトネリコやホルトノキなど暖かい地域に自生するものがおすすめです。陽樹や花を多く付ける樹種も、西側のお庭に適しています。
 
西側のお庭は、常緑樹を主体に西日でも平気なクヌギやコナラ、ウメ、サクラ類、サルスベリなどの落葉樹を用いて緑陰空間を作ります。夏の日差しを抑えながら、冬は適度に日が差し込む快適なお庭になるはずです。